凡人日日是好日

僕は普通の人である。

伝説の男

僕の働いている会社は老舗で入社して数年は良かった。

しかし、その後から現在まで激動の時期を過ごしている。

親会社が変わったことで「改革だ!」となり、大手企業を辞めた人達をどんどん採用した。

大手で部長とか課長とかしていた人達が、いきなり上層部でやってきて、僕らの上司になるなんてことが10年くらい続いている。

最初の頃は本当に大変で、大手企業を辞めた人達はプライドが高く、辞めてきたわりには「大手企業はこうだった。君たちはダメだ」となる。

改革を起こそうとする人に限って、過去を全否定するものだから、それまで過ごしてきた社員には辛い時期だった。

不思議なことにそういう人達はまとまってやってくる。

某企業の部長が転職して上層部に入ると、その下で働いてた人達が続々とやってくる。そして上手くいかなくなると一斉にいなくなる。そして新しい人がまた来る。その下で働いていた人達もまたやってくる。というグルグルとしたローテーションが何週か回って2019年を迎えた。

2019年は新たな波がやってきた。僕らも経験値が上がっているので、今回も手慣れた感じで考えていたが、今回はいつもと違った。

本当に仕事が出来る人達が来たのだ。

しかし、僕らは慣れていない。本当に仕事が出来る上層部に。

そんな中、僕の上司も変わって50代の転職者が現れた。最初はどんな人かと探ってみたが、過去の事例よりは改善され、ちょっとプライドは高いが仕事はしっかりやる人っぽいことはわかった。

最大の懸念事項は「話が長いこと」。

これが長い。トイレを我慢して会話してはいけないほどだ。

客先でも長い。昼以降だと相手が居眠りしてしまうほどに。

僕も何度か意識が飛んだ。

しかし、上司は前職の大手企業では「伝説の男」という噂を聞いた。

気になった僕は聞き込みを行ったが、「話が長い」という情報が多い…

でも、たくさんの案件を受注したような話も聞いた。

全部ひっくるめると「話が長く、唐突にジョークを繰り出す伝説の男」らしい。

なるほど。仕事じゃないのか。

伝説とは、いとも容易く生まれる。

まさか、どこかで僕の伝説もあるのだろうか?

酒に酔っ払って、京浜東北線で自分のカバンの中に向かって吐いたことがある。

その際、向かいの席の女性は衝撃的な目をしていた。

なんて言われているのだろう?

語られる人間にはなりたくない。

僕はそう思っているけど、世間的にはマイノリティー側だ。

自伝に飢えている人は多い…

新任の上司も「私、詳しいですよ。」とか「こんなことしました。」

みたいなコメントが多い。

僕も「スゴイっすね」とか言ってるから、罪はあるのか。

人に「スゴイ」とか言われたら、気をつけよう。