凡人日日是好日

僕は普通の人である。

天才少女

天才とは何か…。
一芸に秀でた場合によく使われている言葉だか
天才っぽく振る舞う人しか見たことない。
本物とは何だ?と今まで考えることもなく生きてきた。
しかし、出会ってしまった。しかも娘だ。
僕には子供が3人いる。迫り来る少子化問題を解決しようとか
結婚した時に「3人は子供ほしいね」なんて会話したわけでもない。
何だか3人いる。
家族で買い物した時に、見知らぬおばちゃんが誉めてくれたりもする。
長男から、しばらくたって長女が生まれ、またしばらくたって次男という
オリンピックを挟む安定したペースだ。
娘は満6歳で、最強の武器はルックス。
周りが騒ぐので、本人も自覚している。
5歳になるくらいまでは、僕も女の子って可愛いなと思うくらいで
何も感じていなかった。
しかし最近になって、その独自の世界観の波に襲われる。

娘は謎の工作物を作る。ハサミとセロハンテープを駆使して
段ボールやチラシを別の存在に変えていく様は錬金術のようだ。
昨日、完成したのは「マクドナルドのカップアイス」だ。
そもそも、マクドナルドにカップアイスが無いような気もする。
マックフルーリーなら知ってるが、カップアイスは31アイスじゃ無かったか?
しかし、天才は気にしない。
僕を呼び寄せ、客を演じさせる。
「ご注文は?」
と聞かれ、ポテトとハンバーガーを頼むと
「なぜ?」
前代未聞である。
マクドナルドでハンバーガーとポテトを注文して理由を問われたことはない。
「アイスですよね?」
天才は容赦ない。
「じゃあ、アイスをお願いします」
だったら、最初からそう言ってよと言わんばかりの流し目をされ
なぜかお持ち帰りだったらしく、袋を手渡される。
出てきたカップは態度に反比例し、ちゃんと6歳児の工作物レベルだった。
「いくらですか?」
驚くなかれ、天才が僕に聞いたのだ。
動揺しつつも、100円と言ってみる。
「いいじゃん」
お褒めにあずかって光栄だ。
最後に手紙をもらった。「後でこっそり見てね」と言われ、一時間後
一人の時に手紙を開けた。
手紙には見たことがない可愛らしいクマのぬいぐるみが書いてあった。
当然、意味はわからない。
後で娘に「見た?」と聞かれ、クマのぬいぐるみだったねと伝えたら
「ぬいぐるみじゃなくて、本物よ」
気をつけてと心配された。
僕は凡人だ。マクドナルドや熊にも偏見があるのかも知れない。
僕の世界では理解できないことを、さも当たり前に振る舞う愛娘は
やはり天才なのだ。